ドイツ、ハノーヴァーの湖で遭遇した手こぎのボートレース。
威勢良く湧き上がる歓声とともに、次々とボートがゴールする。
その手前では鴨たちが「我、関せず」と云った様子で悠々と泳いでいる。
私はビアスタンドでビール片手にこの光景を眺めていた。
1年後同じ場所を訪れると、静寂な湖に相変わらずたたずむ鴨の姿があった。
この湖に生きる鴨たちの光景は、いったい何百年前からこのままなのだろう。
一瞬のボートレースが私たちの人生を象徴するかのように、時間は大きくゆったりと流れている。
この時もまた私は、ビアスタンドでビール片手にこの静かな湖の風景を眺めていた。
一年前のボートレースの歓声だけが耳元でこだましていた。