ようこそニュー・シベリア・カフェへ。
ここは北へ向かう恋人たちが集まる秘密のカフェです。
支配人
「ニュー・シベリア・カフェ」という名の秘密のカフェが、インターネット上のどこかに潜んでいる。
これは、人の道に背く恋に落ちた一組の恋人たちが、普段は面と向かって口に出せないお互いの思いを、第三者になりすまして語り合うために存在する。
この形を持たないインターネット上の「ニュー・シベリア・カフェ」が三次元のギャラリース・ペースに置き換えられ、現実と非現実の狭間をさまよう小さな部屋が姿を現す。
そこには、北へ向かう恋路を歩く男と女の、絡み合う感情のオーラが空虚に妖しく漂う。
このカフェがインターネット上にオープンして約一年。
ふたりの言葉の記録をハードカバー上に収めた。
この本は、誰も手を触れて中を見ることができない。
が、どうしても読みたい人のために、鍵付きのボックスに入った本を十冊だけ用意した。
ただし、鍵が渡されるのは25 年後。
その後、恋人たちがどのような結末を迎えたのか、近況を添えて鍵をお渡しする。
永い永いこの恋の行方を、時の流れに身を委ねて見守ってほしい。